水道工事業に携わって二十年、私は数えきれないほどの「水が出ない」というSOSに対応してきました。戸建て住宅にお住まいの方から電話がかかってくる際、電話口の向こう側からは例外なく焦燥感が伝わってきます。しかし、プロの視点から言わせていただければ、パニックに陥る前に確認してほしいポイントがいくつかあります。まず、落ち着いて確認していただきたいのが「給湯器」の存在です。実は、お湯だけが出ないのか、水もお湯も両方出ないのかによって、原因の所在は大きく絞り込まれます。お湯だけが出ないのであれば、問題は水道管ではなく給湯器の故障や、給湯器へと繋がる配管の不具合にあります。特に冬場は、給湯器の配管が細いために真っ先に凍結することが多いのです。次に確認すべきは「止水栓」です。庭で作業をしていたり、子供が遊んでいたりする拍子に、誤って地面にある元栓を閉めてしまうケースが実際にあります。また、近隣で大規模な道路工事が行われている場合、予期せぬ事故で本管が破損し、緊急的に水が止められていることもあります。私は現場に到着すると、まずメーターボックスを開け、パイロットが回っているか、あるいは逆に全く動かないのかをチェックします。もしパイロットが猛烈な勢いで回っているのに水が出ないのであれば、それは家の中で大規模な漏水が起きており、蛇口に届く前に水がどこかへ逃げてしまっていることを意味します。これは非常に危険な状態で、早急に元栓を閉めなければ家財や建物そのものに深刻なダメージを与えかねません。反対に、全く回っていないのであれば、供給そのものが断たれているか、どこかで完全に詰まっています。最近多いのは、配管の中に発生したサビの塊が、蛇口の根元にある「コマ」や「定流量弁」に詰まってしまうパターンです。これは経年劣化した配管を持つ古い戸建て特有の症状です。私たち業者は専用の道具でこれらを取り除きますが、こうしたトラブルを未然に防ぐには、やはり十数年ごとの配管洗浄が効果的です。水が出ないというトラブルは、住まいからの「助けて」というサインでもあります。そのサインを正しく受け止め、適切な処置を行うことが、私たちプロの役割であり、住まい手の皆様にお願いしたいことでもあります。